簿記の学習をする上で、経過勘定に関する仕訳や勘定科目の使い方を苦手と感じている人は多いのではないでしょうか。
経過勘定は主に決算時の処理ですが、仕訳をする時に、何ヶ月分が当期で、残りが来期分で・・・、未収なの?前受なの?・・・と、とにかく混乱しがちな分野になります。
お金の動きがどの時期に該当する支払いなのか、をじっくり考えてみると理解が深まると思います。
経過勘定とは何か?
経過勘定とは、「未収収益・未払費用・前受収益・前払費用」という勘定科目の総称であり、実際に「経過勘定」という勘定科目があるわけではありません。
「経過勘定」とは、購入やサービスが単発ではなく、継続的に発生している取引が対象です。
それらの取引において、実際にお金が動いたタイミング と サービスなどが発生するタイミング にズレが生じている場合、そのズレを調整するために使用されます。
毎月計上する給料などは、毎月「経過勘定」が発生しますが、
この記事では、「1年払い」などにより、決算をまたいだズレを調整する時の処理方法を解説します。
決算整理事項です。
経過勘定が必要な理由
経過勘定が必要な理由の一つに、会計上のルールがあります。
それは、実際にお金が動いたタイミングではなく、サービスや商品が提供された時点、経済的な活動が行われた時点で「費用・収益」を計上するという「発生主義」という考え方です。
企業会計原則には以下のように書かれています。
(難しいので無視して大丈夫!!)
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
前払費用及び前受収益は、これを当期の損益計算から除去し、未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に計上しなければならない。
要するに、
お金を1年分もらおうが、2年分払おうが、どれだけの札束が飛んでいこうと、
当期の費用・収益(損益計算書)で最後に算出される額は、当期のサービス期間分だけになるということです。
家賃の支払いなどのように、長期間継続される取引では、1年分をまとめて支払うことがあります。
その場合、支払った金額の中に翌期分が含まれていることもあります。
例えば、3月31日が決算の企業があるとします。
1月に今後1年分の家賃を払った場合、実際に払ったのは1年分ですが、家賃(費用)としては、1月~3月の当期分 と 4月~12月の翌期分 に分けて計上しないといけません。
その調整をするための仕訳で使用されるのが、経過勘定です。
要するに、当期1年分の家賃は当期に払う、翌期の家賃は翌期になったら払う、という払い方であれば経過勘定の仕訳は必要ないわけです!
このルールによって、収益・費用が適切な会計期間に正しく反映され、企業の正確な財務状況が評価できるのです。
このように、会計期間をまたいで発生したズレを調整するために、「経過勘定」と呼ばれる4つの勘定科目が使用されます。
経過勘定の種類(未収・未払・前受・前払)と覚え方
経過勘定には、主に以下の4つの種類があります。
- 未収収益
- 未払費用
- 前受収益
- 前払費用
覚え方としては、まず、収益 なのか 費用 なのかを考えます。
そのサービスに関して、
自分がお金をもらう立場 であれば、それは「収益」です。
自分がお金を支払う立場 であれば、それは「費用」です。
これは簡単ですね。
次に、「未収」「未払」「前受」「前払」は、実際にサービスが発生するタイミングに対して、お金の動きが後なのか先なのか、で考えると分かりやすいです。
「未収」「未払」・・・先にサービスが終わり、お金の動きがまだ。
「前受」「前払」・・・先にお金が動き、サービスがまだ。

このように、実際のサービス と お金が動いた日 にズレがある場合に経過勘定の仕訳が必要になります。(今回は、そのズレが決算をまたぐ場合での解説です)
逆に、実際のサービスとお金の動きが、同じ会計期間内に行われていたのであれば、経過勘定は必要ないわけです。
例えば、3月31日決算の企業が「4月1日に今後1年分の家賃120万円を現金で一括払いした」
(借)支払家賃120万円/(貸)現金120万円
この仕訳だけでOKです。
当期分の家賃を当期に支払っただけです。
決算をまたいでいないので、経過勘定は発生しません。
サービスとお金の動きとの間に決算が入る場合に、経過勘定が必要となります。
経過勘定の使い分けと仕訳例(取引例を用いて具体的に説明)
簿記の試験問題では、経過勘定の決算整理事項として、利息や保険料、家賃などがよく出題されています。
ここでも「家賃」を元にした仕訳例で解説していきます。
経過勘定(未収・未払・前受・前払)が、借方と貸方のどちらにくるかは、問題を見てもすぐには判断しづらいです。
なので、先に「費用」「収益」から考えていきましょう。
その反対側が経過勘定科目です。
下記は全て、決算時におこなう仕訳です。
未収収益 の仕訳例
A社は、B社に倉庫を貸している。
月 額 → 10万円
受取日 → 12月31日に過去1年分の家賃を後払いで受け取る。
決算日 → 3月31日
①まずは「収益」から考えます
12月31日にA社が受け取ったのは、過去の分です。
その中に、当期4月~12月までの9ヶ月分が含まれています。
この9ヶ月分に関しては、当期の分を当期に受け取っているので問題ないです。
しかし、当期は3月31日までなので、1月~3月の3ヶ月分の家賃30万円がもらえていません!
「当期の費用・収益は当期に計上する」のルールに則り、3ヶ月分の家賃も当期の収益に計上します。
(貸方)受取家賃 30万円
実際はもらえてないけど、もらえたように計上する!のです。
②相手科目は「経過勘定」がきます
このパターンの受取家賃は、回収できていない収益のことなので「未収収益」に該当します。
今後、代金を受け取る権利があるので未収収益は「資産」に区分されます。
仕訳は、
(借)未収収益 30万円/(貸)受取家賃 30万円
未払費用 の仕訳例
A社は、B社から倉庫を借りている。
月 額 → 10万円
支払日 → 12月31日に過去1年分の家賃を後払いで払う。
決算日 → 3月31日
①まずは「費用」から考えます
12月31日にA社が支払ったは、過去の分です。
その中に、当期4月~12月までの9ヶ月分が含まれています。
この9ヶ月分に関しては、当期の分を当期に支払っているので問題ないです。
しかし、当期は3月31日までなので、1月~3月の3ヶ月分の家賃が支払えていません!
「当期の費用・収益は当期に計上する」のルールに則り、3ヶ月分の家賃も当期の費用に計上します。
(借方)支払家賃 30万円
実際は支払ってないけど、支払ったように計上する!のです。
②相手科目は「経過勘定」がきます
このパターンの支払家賃は、実際は支払いができていない費用なので「未払費用」に該当します。
今後、代金を支払わないといけない義務があるので未払費用は「負債」に区分されます。
仕訳は、
(借)支払家賃 30万円/(貸)未払費用 30万円
前受収益 の仕訳例
A社は、B社に倉庫を貸している。(当期1月1日から賃貸開始とする)
月 額 → 10万円
受取日 → 12月31日に今後1年分の家賃を先払いで受け取る。
決算日 → 3月31日
①まずは「収益」から考えます
12月31日の時点で、家賃を受け取った時の仕訳がされています。
(借)普通預金 120万円/(貸)受取家賃 120万円
この120万円は今後1年分の家賃です。
その内訳は、
・当期分が、1月~3月の3ヶ月分で30万円
・翌期分が、4月~12月の9ヶ月分で90万円
→ 当期分の30万円は、当期分を当期に受け取っているので、そのままでOK!
→ 翌期分の90万円は、当期に計上したままではダメ! 減少させます。
(借方)受取家賃 90万円
これで、受取家賃の簿価は、120万-90万=30万円 となり、当期分だけの家賃と一致します。
②相手科目は「経過勘定」がきます
このパターンの受取家賃は、未来の分まで先に受け取っている収益なので「前受収益」に該当します。
先にお金を受け取っているということは、翌期には、サービスを提供しないといけない義務が発生しているので、前受収益は「負債」に区分されます。
仕訳は、
(借)受取家賃 90万円/(貸)前受収益 90万円
となります。
前払費用 の仕訳例
A社は、B社から倉庫を貸りている。(当期1月1日から賃貸開始とする)
月 額 → 10万円
受取日 → 12月31日に今後1年分の家賃を先払いで払う。
決算日 → 3月31日
①まずは「費用」から考えます
12月31日の時点で、家賃を支払った時の仕訳がされています。
(借)支払家賃 120万円/(貸)普通預金 120万円
この120万円は今後1年分の家賃です。
その内訳は、
・当期分が、1月~3月の3ヶ月分で30万円
・翌期分が、4月~12月の9ヶ月分で90万円
→ 当期分の30万円は、当期分を当期に支払っているので、そのままでOK!
→ 翌期分の90万円は、当期に計上したままではダメ! 減少させます。
(貸方)支払家賃 90万円
これで、支払家賃の簿価は、120万-90万=30万円 となり、当期分だけの家賃と一致します。
②相手科目は「経過勘定」がきます
このパターンの支払家賃は、未来の分まで先に支払っている費用なので「前払費用」に該当します。
先にお金を支払っているということは、翌期には、サービスを受ける権利が発生しているので、前払費用は「資産」に区分されます。
仕訳は、
(借)前払費用 90万円/(貸)支払家賃 90万円
経過勘定における翌期首の仕訳
上記の通り、サービスのタイミング と お金が動いたタイミング のズレを調整するために、経過勘定を使用してきました。
しかし、経過勘定を使って、期末に費用・収益を調整した場合、翌期首にも大切な仕訳が必要になってきます!
それが「再振替仕訳」です。
再振替仕訳(逆仕訳)とは
決算時に費用・収益の処理として、
・当期の分は当期に入れる!
・翌期の分は当期から引く!
という、経過勘定の仕訳をしましたね。
例えば、
当期の費用・収益は、当期に計上しますが、
当期の中に、翌期分の費用・収益が含まれていたら、その分は引きます。
そして、
実際のサービス期間である翌期で計上するのです!
この処理が「再振替仕訳」です。
前期末 の 逆仕訳 を 翌期首 に行うのです。
再振替仕訳(逆仕訳)の例
例えば、
翌期の家賃90万円を、当期に支払っていた場合、当期の決算ではその分を減少させます。
当期3月31日 決算
(借)前払費用 90万円/(貸)支払家賃 90万円
↓↓ 再振替仕訳(逆仕訳)↓↓
翌期4月1日 期首
(借)支払家賃 90万円/(貸)前払費用 90万円
翌期首に再振替仕訳(逆仕訳)をすることで、支払家賃90万円が費用として計上されました。
翌期分の家賃が、翌期の費用に適切に計上されることで、正確な損益計算書を作ることができるのです。
資産である「前払費用」は、再振替仕訳をすることで、相殺されます。
経過勘定仕訳と再振替仕訳による年間での金額
何年も継続しているサービスの場合、経過勘定仕訳や再振替仕訳を行うことで、年間の収支でみれば、結局は1年分の金額になっているのです。
支払家賃のズレが90万円だとします。
4月期首 支払家賃 +90万円(前期末決算の逆仕訳)
1月 支払家賃 +120万円(1年分家賃)
3月決算 支払家賃 △90万円(9ヶ月分は翌期の分なので引く)
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差引 120万円
このように、年間の収支でみると、結局は1年分の家賃と一致するようなっています。
そのため、
期首で逆仕訳をしなかった場合には、1年分の家賃が合わなくなるのです。
家賃の支払いが続く限り、この仕訳も繰り返されるわけです。
これは、未収・未払・前受・前払 のどれになっても、最終的な金額は1年分の料金と一致します。
要するに、実際のサービス発生期間 と その料金 を決算時に一致させるために 発生主義会計のルールに基づいた 経過勘定仕訳 や 再振替仕訳 を行うのです。
経過勘定のまとめ
経過勘定の処理は難しいですが、簿記の基本となる考え方なので、がんばって理解していきましょう。
経過勘定が適切に処理できないと、費用や収益を正確に計上することができません。
そうなると、当期の正しい利益を算出することもできません。
結果、損益計算書だけでなく、貸借対照表にも影響してくることになります。
未収・未払・前受・前払のそれぞれが、どのような取引に対応するのか、どのような仕訳が適切なのか、を理解することが、正しい決算書作成に繋がってきます。
この記事が、皆様の簿記学習の参考になれば幸いです。


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